わたしが一生なれないタイプ

彼の好きだった「あの子」
どんな子なのかぜんぜん知らないけど
一度だけ写真を見せてもらったことがある
いかにも「そういう」女の子が着るような浴衣を着て、不器用にピースしている写真
ああ本当に好きなんだって思った
加工アプリで撮った写真でもなければ、盛れてるプリクラでもない、普通のカメラで撮った一瞬の写真
それなのに彼にとっては可愛いらしい
ぜんぜん可愛くない、普通じゃん?この子よりわたしの方が可愛いもん!わたしのこと好きになってよ、なんてつまんないこと言っちゃったな
彼の人生において彼女には勝てないのに
彼女を撮っているときの彼は、きっとものすごく愛おしそうな顔をしてたんだろうなあなんて考えたら悔しかったし寂しかった
もう誰も彼女以上の存在にはなれないんだもん
でも、不思議とそれと同時に嬉しさも感じたの
だめなら次!可愛ければ誰でも!なんて人ばっかりだったから
その辺の恋愛映画では触れられなかった
はじめて他人の恋愛感情に触れられた気がしたの
「君、可愛い彼女持ってるね、僕の彼女と交換しよう!」
そんな可愛いはいらないわ、
おばさんになっても抱きしめて